クリニック・医院の集客方法|Web施策の優先順位と規制の確認
新しく開業した、あるいは患者数が伸び悩んでいる。そこで何かWeb施策をと考えたとき、多くの医院がまず広告出稿や記事制作の見積もりを集めます。 その前に確認しておくべきことがあります…

目次 5 SECTIONS
- 医療機関のウェブサイトは2018年6月1日から医療法の広告規制の対象になっている
- 着手順は、規制の確認、Googleビジネスプロフィールの整備、自院サイトの情報整備の順になる
- 患者に体験談の投稿を依頼すると誘引性が生じ、掲載できなくなる
新しく開業した、あるいは患者数が伸び悩んでいる。そこで何かWeb施策をと考えたとき、多くの医院がまず広告出稿や記事制作の見積もりを集めます。
その前に確認しておくべきことがあります。医療機関のウェブサイトは、一般の店舗とは違い、医療法の広告規制がかかる領域です。作ってから直すことになると、費用も時間も二重にかかります。
ここでは、規制の範囲を押さえたうえで、Googleビジネスプロフィール、自院サイト、クチコミという3つの入口をどの順で整えるかを整理します。
クリニックのWeb施策はどの順で着手するのか
優先順位は、費用の大きさではなく、手戻りの起きやすさで決めるのが実務的です。規制に触れる可能性がある部分を先に固めてから、集客の量を増やす施策に進みます。
| 順序 | 取り組むこと | 先に置く理由 |
|---|---|---|
| 1 | 医療広告規制の範囲を確認する | 後から判明すると、制作物の作り直しが発生する |
| 2 | Googleビジネスプロフィールを整える | 診療圏内の検索で最初に触れられる面で、費用がかからない |
| 3 | 自院サイトの情報を揃える | 診療内容・費用・アクセスは、来院前に確認される情報 |
| 4 | クチコミの運用を設計する | 依頼の仕方によっては広告規制に触れるため、設計が先 |
| 5 | 広告出稿を検討する | 上記が整っていない状態で流入を増やしても、離脱しやすい |
この順序は、あくまで手戻りを減らすための考え方です。既に1〜4が整っている医院であれば、別の順序になります。
医療広告規制はウェブサイトにも及ぶ
医療法第6条の5第1項は、広告を次のように定めています。
何人も、医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して、文書その他いかなる方法によるを問わず、広告その他の医療を受ける者を誘引するための手段としての表示(以下この節において単に「広告」という。)をする場合には、虚偽の広告をしてはならない。
「文書その他いかなる方法によるを問わず」「誘引するための手段としての表示」という書き方であるため、媒体の種類を問いません。平成29年6月14日に公布された医療法等の一部を改正する法律(平成29年法律第57号)により、医療機関のウェブサイトも規制の対象として扱われることが明確になり、平成30年(2018年)6月1日に施行されました。
運用の指針が「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)」です。令和8年3月30日に最終改正されており、名称に「等」が入る形に変わっています。古い名称やURLを参照している社内資料がある場合は、確認し直してください。
禁止される広告の類型
医療広告等ガイドラインは、禁止される広告を8つの類型に分けています。
- 内容が虚偽にわたる広告(虚偽広告)
- 他の病院又は診療所と比較して優良である旨の広告(比較優良広告)
- 誇大な広告(誇大広告)
- 公序良俗に反する内容の広告
- 広告可能事項以外の広告
- 患者等の主観に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談
- 治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等
- その他
Web施策で問題になりやすいのは、2、3、6、7です。比較優良広告は「特定又は不特定の他の医療機関と自らを比較の対象とし、施設の規模、人員配置、提供する医療の内容等について、自らの病院等が他の医療機関よりも優良である旨を広告すること」と定義されており、「地域No.1」のような表現がここに当たります。
術前術後の写真は一律に禁止というわけではありません。ガイドラインは、通常必要とされる治療内容や費用に関する事項、主なリスク・副作用等に関する詳細な説明を付した場合については、誤認させるおそれがある写真等に当たらないとしています。
広告可能事項の限定解除
医療法第6条の5第3項は、広告できる事項を列挙する方式(ポジティブリスト)をとっています。そのままでは書ける内容が限られますが、医療法施行規則第1条の9の2が定める要件をすべて満たす場合には、この制限が解除されます。要件は4つです。
| 要件 | 内容 | 適用範囲 |
|---|---|---|
| 1 | 医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること | 常に必要 |
| 2 | 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること | 常に必要 |
| 3 | 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること | 自由診療のみ |
| 4 | 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること | 自由診療のみ |
第3号・第4号は、条文のただし書により、自由診療について情報を提供する場合に限られます。保険診療のみを扱う医院であれば、実務上は1と2を満たしているかの確認が中心になります。
要件1に「患者等が自ら求めて入手する情報」とある点には注意が必要です。この文言をどう読むかによって、媒体ごとの扱いが変わる可能性があります。個別の媒体が限定解除の対象になるかどうかは、ガイドライン本文と事例解説書を確認したうえで判断してください。
Googleビジネスプロフィールを整える
Googleは、ローカル検索結果の掲載順位が「関連性」「距離」「知名度」の3つで決まると公表しています。関連性は検索語句とビジネスプロフィールが合致する度合い、距離は検索している人から各拠点までの距離、知名度はビジネスがどれだけ広く知られているかを指します。
このうち距離は動かせません。医院側で手を入れられるのは、関連性の土台にあたる情報の正確さです。
- カテゴリが実際の診療内容と合っているかを確認する
- 診療時間、休診日、電話番号を最新の状態にする
- 外観と院内の写真を、実際の様子がわかる形で掲載する
- ウェブサイトのリンク先を、該当する診療内容のページに合わせる
- 表示されている情報に誤りがないか、患者の視点で読み直す
これらは費用がかからない範囲の作業です。ただし、プロフィール上の記載も医療広告規制の考え方の外にあるわけではありません。診療科名や提供する医療の内容として書ける範囲を超えた表現は、自院サイトと同じ基準で見直してください。
クチコミは広告に当たるのか
ここが医療機関で最も判断が分かれる部分です。医療広告等ガイドラインに関するQ&Aは、第三者が運営するクチコミサイト等への体験談について、次のように整理しています。
個人が運営するウェブサイト、SNSの個人のページ及び第三者が運営するいわゆる口コミサイト等への体験談の掲載については、医療機関が広告料等の費用負担等の便宜を図って掲載を依頼しているなどによる誘引性が認められない場合は、広告に該当しません。
逆に言えば、誘引性が認められる場合は広告に該当します。同じQ&Aは、医療機関が患者やその家族に、有償・無償を問わず肯定的な体験談の投稿を依頼した場合には、当該体験談には誘引性が生じるとしています。
つまり、他業種で行われている「会計時にクチコミ投稿を依頼する」という運用は、医療機関ではそのまま持ち込めません。整理すると次のようになります。
- 患者が自発的に投稿し、医院が依頼も費用負担も編集への関与もしていない場合、誘引性は生じない
- 医院が投稿を依頼した場合、有償・無償を問わず誘引性が生じる
- 医院の依頼で、サイト運営者が否定的なクチコミを削除したり、肯定的なものを上位に表示したりした場合、誘引性が生じる
- 依頼がなくても、事後的に医院がそのサイトの運営費を負担した場合、誘引性が生じると考えられる
また、自院サイトに患者の感想を掲載する場合について、Q&Aは、当該医療機関にとって便益を与えるような感想等を取捨選択して掲載し強調することは虚偽・誇大に当たるため広告できない、としています。良い感想だけを選んで並べる構成は取れません。
クチコミを「集める施策」として設計する前に、自院の運用がどの位置にあるかを確認してください。
よくある質問
医療機関でもMEO対策はできますか
ローカル検索で表示される情報を正確にする、写真を掲載する、診療時間を最新にするといった作業は、医療機関でも行えます。一方で、患者に投稿を依頼してクチコミを増やす手法は、医療広告等ガイドラインに関するQ&Aが示す誘引性の考え方に照らすと採用できません。業種を問わず使える手法として紹介されているものを、そのまま持ち込まないでください。
「地域で人気のクリニック」という表現は使えますか
医療広告等ガイドラインは、他の医療機関と比較して自院が優良である旨の広告を比較優良広告として禁止しています。客観的な事実であっても、他院との優劣を示す表現は避けるのが安全です。個別の表現が該当するかどうかは、所管する保健所や医療広告に詳しい専門家に確認してください。
自由診療のページには何を書けばよいですか
医療法施行規則第1条の9の2は、限定解除の要件として、自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容と費用等に関する事項、および主なリスク・副作用等に関する事項の情報提供を求めています。費用の記載だけでは足りず、リスクと副作用の記載が必要になります。
規制に違反しているか不安な場合はどこに相談しますか
医療広告の規制は、都道府県、保健所を設置する市および特別区が所管しています。ウェブサイトの具体的な表現については、厚生労働省が公表している「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」に事例が掲載されているため、まずこれを確認したうえで、判断がつかないものを所管窓口に相談する流れが現実的です。
本記事の手順・仕様は2026年9月時点のものです。Googleの仕様は変更されることがあります。
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