口コミの特典・プレゼントは違反か|Google規約と景表法
「口コミを書いてくれたらドリンク1杯サービス」というPOPは、いまも店頭で見かけます。件数は確かに増えるので、効果があるものとして共有されてきた手法です。 ただ、この運用はGoog…

目次 7 SECTIONS
- クチコミと引き換えに割引や無料の商品を渡す行為は、Googleのポリシーで禁止されている
- 特典の提供は、景品表示法の景品規制に触れる可能性があり、限度額の考え方を確認する必要がある
- 見返りを伴わない口コミの依頼そのものは禁止されておらず、Googleはリンクやスキャン用コードでの依頼を案内している
「口コミを書いてくれたらドリンク1杯サービス」というPOPは、いまも店頭で見かけます。件数は確かに増えるので、効果があるものとして共有されてきた手法です。
ただ、この運用はGoogleのポリシーで明確に禁止されています。さらに日本国内では、景品表示法という別の軸も関わってきます。両者は目的も所管も違うため、「Googleが禁止しているか」と「法律に触れるか」は分けて考える必要があります。
ここでは3つのレイヤー(Googleのポリシー、景品規制、ステルスマーケティング規制)を切り分けたうえで、依頼としてやってよい範囲を整理します。法令の当てはめには解釈の幅があるため、自店の運用を決める際は法務の確認を受けてください。
まずGoogleのポリシーを確認する
Googleビジネスプロフィールのヘルプは、クチコミの投稿、クチコミの変更、否定的なクチコミの削除と引き換えに、無料または割引価格で商品やサービスを提供する行為を、虚偽のエンゲージメントとして固く禁じています。
マップユーザーの投稿コンテンツに関するポリシーでも、クチコミの投稿や、否定的なクチコミの修正・削除と引き換えに、金銭的報酬・割引・無料の商品やサービスといったインセンティブを提供する行為が禁止事項として挙げられています。
つまり、次の3つはいずれも同じ禁止事項に含まれます。
- 口コミを書いた人に割引や粗品を渡す
- 低評価を書いた人に、書き換えを条件に何かを提供する
- 低評価の削除を条件に、返金や値引きを提示する
3つ目は「クレーム対応」の顔をして現れるため、現場で判断を誤りやすいところです。返金と削除依頼を条件で結びつけないでください。
違反したときに起きること
Googleのポリシーの概要には、ポリシーに違反した場合、コンテンツの表示や、プロフィールまたは販売アカウントへのアクセスが制限されると記載されています。アカウント全体が制限された場合は、そのアカウントの管理下にあるすべてのプロフィールの掲載が停止されるとも説明されています。
投稿された口コミが消えるだけでは済まない可能性がある、ということです。多店舗を1つのアカウントで管理している場合は、影響範囲が全店に及びます。
3つのレイヤーを切り分ける
Googleのポリシーだけを見ていると、法令側の論点を取りこぼします。関係するレイヤーは次の3つです。
| レイヤー | 誰のルールか | 何を問題にするか | 違反したときの帰結 |
|---|---|---|---|
| Googleのポリシー | Google(民間事業者の規約) | 見返りと引き換えの投稿・修正・削除 | コンテンツ削除、プロフィール停止、アカウント制限 |
| 景品表示法の景品規制 | 消費者庁(法令) | 顧客誘引のために提供する経済上の利益の額 | 措置命令など行政処分の対象になりうる |
| ステルスマーケティング規制 | 消費者庁(景品表示法の告示) | 事業者の表示なのに、そう分からないこと | 措置命令など行政処分の対象になりうる |
3つは独立しています。Googleのポリシーに触れなくても法令上の問題が残ることはありますし、その逆もあります。片方だけを根拠に「問題ない」と判断しないでください。
景品表示法から見るとどうなるか
景品表示法上の「景品類」は、次の3つの要件を満たすものとされています。
- 顧客を誘引するための手段として
- 事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供する
- 物品、金銭その他の経済上の利益
口コミの謝礼が2の「取引に付随して提供する」に当たるかどうかは、渡し方によって変わりうる部分です。本記事ではここを断定しません。来店・購入を条件にしているのか、口コミの投稿だけを条件にしているのかで見え方が変わるため、自店の運用に即して法務の判断を仰いでください。
景品類に当たると整理された場合、提供できる額には上限があります。消費者庁が示す限度額は次のとおりです。
| 区分 | 取引価額 | 景品類の最高額 | 総額 |
|---|---|---|---|
| 総付景品 | 1,000円未満 | 200円 | — |
| 総付景品 | 1,000円以上 | 取引価額の10分の2 | — |
| 一般懸賞 | 5,000円未満 | 取引価額の20倍 | 懸賞に係る売上予定総額の2% |
| 一般懸賞 | 5,000円以上 | 10万円 | 懸賞に係る売上予定総額の2% |
| 共同懸賞 | 取引価額を問わない | 30万円 | 懸賞に係る売上予定総額の3% |
総付景品は、条件を満たした人全員に渡すタイプです。抽選で当たった人だけに渡すのが懸賞にあたります。「口コミを書いた方全員にドリンク1杯」は前者、「口コミを書いた方から抽選で1名に商品券」は後者の考え方に近くなります。
額の問題以前に、Googleの規約で止まる
ここが実務上の要点です。仮に景品規制の限度額に収まっていても、口コミと引き換えである時点でGoogleのポリシーには抵触します。「200円以内なら大丈夫」という整理は成り立ちません。
法令と規約の両方を通す必要がある、という順序で考えてください。
ステルスマーケティング規制との関係
ステルスマーケティング規制は、令和5年10月1日から施行されています。消費者庁の説明では、規制の対象となるのは商品・サービスを供給する事業者(広告主)であり、企業から広告・宣伝の依頼を受けたインフルエンサー等の第三者は規制の対象とはならないとされています。
対象になるのは「広告であって、一般消費者が広告であることを分からないもの」です。SNSの投稿やレビューの投稿も、この対象範囲に含まれるとされています。
店舗の口コミ運用に引きつけると、論点は「その口コミが事業者の表示にあたるかどうか」です。事業者が投稿内容に関与していれば事業者の表示に近づき、顧客が自発的に書いた感想であれば個人の感想として扱われる、という方向で整理されます。どこからが関与にあたるかは判断を要するため、本記事では線引きの数値的な基準を示しません。該当しそうな運用がある場合は、消費者庁の運用基準を確認したうえで法務にあたってください。
なお、規制対象は事業者であって、書いた顧客ではありません。「お客様が自分の判断で書いたのだから店は無関係」とは言えない構造になっています。
では、何をやってよいのか
依頼そのものは禁止されていません。Googleは、クチコミを増やす方法として、リンクやスキャン用のコードを使ってユーザーに依頼することを案内しています。依頼する対象は、実体験に基づくクチコミに限られます。
安全側に倒した運用は、次のようになります。
- 会計時や施術後など、体験の直後に口頭で依頼する
- リンクまたはスキャン用のコードを渡し、その場で投稿できる状態にする
- 評価の内容には触れず、「率直な感想を」とだけ伝える
- 見返り(割引、粗品、ポイント、次回無料など)は一切結びつけない
- 満足度で依頼先を選別しない(良い評価をくれそうな人だけに頼まない)
- 投稿されたものには、良し悪しにかかわらず返信する
4と5を外すと、Googleのポリシーか、事業者の表示にあたるかの論点のどちらかに近づきます。
| やること | 判断 | 根拠 |
|---|---|---|
| 口コミを書いてほしいと依頼する | 問題なし | Googleがリンク・コードでの依頼を案内 |
| 投稿用のQRコードを店頭に置く | 問題なし | 同上 |
| 書いてくれた人に割引を渡す | 禁止 | Googleのポリシーで明示的に禁止 |
| 低評価の削除と引き換えに返金する | 禁止 | 同上 |
| 従業員に自店の口コミを書かせる | 禁止 | 利益相反に基づくコンテンツの禁止 |
| 文面を店側が用意して書き写してもらう | 要確認 | 事業者の表示にあたる可能性。法務確認を推奨 |
件数が伸びないときに見るところ
特典を外すと件数が落ちる、という声はあります。ただ、落ちた分は「特典で動いていた投稿」であって、来店動機を反映したものではありません。
見返りなしで件数を積むには、依頼の量とタイミングを設計するほうが確実です。依頼した人数を記録し、投稿に至った割合を見ると、改善すべきなのが依頼のタイミングなのか、伝え方なのかが切り分けられます。
よくある質問
口コミを書いてくれた人にお礼を言うのも違反ですか
お礼を伝えること自体は、経済上の利益の提供ではありません。禁止されているのは、投稿・修正・削除と引き換えに割引や無料の商品・サービスを提供することです。口頭のお礼や、投稿への返信は問題になりません。
全員に配っているクーポンを、口コミを書いた人にも渡すのは
「口コミを書いたこと」を条件にしていなければ、引き換えにはあたらないと整理できます。ただし運用上、口コミの依頼とクーポンの配布が同じ場面で行われていると、顧客からは条件のように見えます。伝え方を含めて、条件として受け取られない形になっているかを確認してください。
従業員に口コミを依頼してもよいですか
自店の従業員による投稿は、利益相反に基づくコンテンツとしてGoogleのポリシーで禁止されています。現在または過去の雇用関係、契約関係、顧問関係にある人の投稿が該当します。家族や取引先も、同じ考え方で慎重に扱ってください。
過去に特典を渡して集めた口コミはどうすればよいですか
すでに投稿されたものを事業者側から取り消すことはできません。できるのは、その運用を止めることと、以後の依頼を見返しのない形に切り替えることです。過去分の扱いに不安がある場合は、法務に相談したうえで方針を決めてください。
他店がやっているのに、うちだけ守るのは不利ではありませんか
不利に見える期間はあります。ただし、Googleのポリシー違反はプロフィールの停止やアカウント制限につながりうるもので、多店舗の場合は影響が全店に及びます。取り返しのつく失点かどうかで比較してください。
本記事の手順・仕様は2026年9月時点のものです。Googleの仕様は変更されることがあります。
自店の現状を1分で確かめる
記事の内容を自店に当てはめる前に、いまの状態を数値で把握しておくと、どこから手をつけるべきかが決まります。無料MEO診断は5問1分、登録不要でスコアが出ます。
あわせて読みたい
Googleの口コミが消えた原因と対処法|復元の可否を切り分ける
先週まで見えていた口コミが、今日は数件少ない。平均評価も少し動いている。口コミが消えたという相談は、だいたいこの気づき方で来ます。 消えた理由は、店舗側の操作で
口コミ返信の書き方5原則と審査で落ちない条件
口コミ返信は、書いた内容がそのまま世に出る作業ではありません。Googleの審査を通ってから公開されます。「返信したのに表示されない」という相談の多くは、ここで
ポリシー違反の口コミを報告する手順|削除の条件と再審査請求
事実と違う内容、来店していない人からの投稿、誹謗の混じった文面。放っておけないと感じる口コミが付いたとき、まず検討することになるのが「報告」です。 ただ、報告で
Magazine


