歯科医院の集客方法|Web施策の優先順位
ホームページのリニューアル、SNS、口コミ、リスティング広告、動画。歯科医院に提案されるWeb施策は多く、どれも「やったほうがよい」と説明されます。しかし一人院長の医院で同時に走ら…

目次 4 SECTIONS
- 歯科医院のWeb施策は、医療広告規制で書ける内容が先に制限される。
- Googleはローカル検索の要素として距離を明示しており、商圏の外に届かせる施策の優先度は下がる。
- 最初に着手すべきはGoogleビジネスプロフィールの基本情報の精度で、広告はその後になる。
ホームページのリニューアル、SNS、口コミ、リスティング広告、動画。歯科医院に提案されるWeb施策は多く、どれも「やったほうがよい」と説明されます。しかし一人院長の医院で同時に走らせられる施策は、現実には1つか2つです。
この記事では、歯科医院に固有の3つの前提から、着手の順番を組み立てます。効果の大きさを断定するのではなく、制約から逆算して「後回しにできるもの」を先に落とす進め方をとります。
優先順位を決める3つの前提
順番を考える前に、歯科医院の置かれた条件を確認します。
前提1:書ける内容が法令で先に制限されている
一般の店舗であれば、訴求内容はほぼ自由に設計できます。歯科医院は違います。
医療法第6条の5第3項は、広告できる事項を列挙で限定しています。列挙されているのは、歯科医師である旨、診療科名、名称・電話番号・所在地、診療日や診療時間、従業者に関する事項、提供される医療の内容に関する事項などです。ここに挙がっていない事項は、限定解除の要件を満たす場合を除いて広告できません。
さらに同条第2項に連なる医療法施行規則第1条の9は、患者その他の者の主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談の広告を禁止し、治療の前後の写真等で患者等を誤認させるおそれがあるものも禁止しています。
つまり、他業種の集客で主力になる「お客様の声」と「ビフォーアフター」が、最初から使えません。この制約を後から知って作り直す事態を避けるため、施策の順番は制約の側から決めるのが合理的です。詳しくは「医療機関がMEOに取り組む際の法令上の注意点」で扱っています。
前提2:商圏が狭く、競合の数が多い
厚生労働省の医療施設動態調査によると、令和8年6月末概数で全国の歯科診療所は65,035施設です(令和8年8月31日公表)。一方でGoogleは、ローカル検索結果が主に関連性、距離、知名度に基づいて表示されると公表しており、距離を明示的な要素として挙げています。
距離は施策で動かせません。したがって、商圏の外にいる人へ広く届かせる施策は、歯科医院では費用対効果が読みにくくなります。ここは断定ではなく、Googleが距離を要素として挙げている事実からの判断です。
前提3:検索の入口はほぼスマートフォンである
総務省の令和7年通信利用動向調査(令和7年8月末時点、令和8年5月29日公表)では、世帯のスマートフォン保有率は91.8%、個人のインターネット利用率は85.7%でした。13〜69歳の各年齢階層で利用率は9割を超えています。
この調査は「来院前に店舗を検索する割合」を直接示すものではありません。あくまで前提条件として、スマートフォンでの表示品質を後回しにする理由がないことを示すものとして扱います。
何から着手するか
以上を踏まえた順番です。上から順に、下の施策の効果を左右する関係にあります。
| 順位 | 施策 | この順位に置く根拠 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 1 | Googleビジネスプロフィールの基本情報 | 関連性・距離・知名度のうち、関連性に直接効く設定項目がここに集まる | カテゴリと診療時間の精度が最優先。頻繁な変更は避ける |
| 2 | 口コミの蓄積と返信の運用 | Googleが知名度の説明でクチコミ数と評価に言及している | 依頼の仕方を誤ると医療広告規制とGoogleポリシーの両方に抵触する |
| 3 | 自院サイトの診療内容ページ | 広告可能事項の範囲内で情報量を増やせる唯一の場所 | 自由診療は限定解除の4要件を満たす必要がある |
| 4 | 予約導線の整備 | 上の3つで増えた接触を取りこぼさないため | 電話しか受けられない時間帯を放置しない |
| 5 | 有料広告 | 上が整っていないと受け皿がない | 医療広告規制は広告媒体を問わず適用される |
順位は効果の大きさの序列ではありません。前の施策が整っていないと後の施策の成果が測れない、という依存関係の順です。
1. Googleビジネスプロフィールの基本情報
手順は次のとおりです。
- メインカテゴリを1つ決める。実際の主業態を表す語を選びます。抽象度の高い語や、実態と異なる語は避けてください。選び方は「メインカテゴリの選び方と順位への影響」にまとめています
- 診療時間を、受付終了時刻ではなく実際の運用に合わせて入力する。祝日や年末年始は特別営業時間で設定します
- 電話番号と所在地を、サイトや他の掲載先と一致させる
- 提供している診療内容を、広告可能事項の範囲で登録する
- 写真を院内の実物で登録する
ビジネス名には注意が必要です。Googleのガイドラインは、ビジネス名にマーケティングのタグライン、店舗コード、営業時間情報、電話番号やURL、所在地情報を含めることを認めていません。「〇〇歯科医院(〇〇駅すぐ)」のような書き方は、所在地情報の追加に当たります。
2. 口コミの蓄積と返信
歯科医院では、依頼の仕方そのものが規制の対象になります。
- Googleは、クチコミと引き換えにインセンティブを提供する行為と、否定的なクチコミを妨げて肯定的なクチコミを選択的に募る行為を禁止しています
- 医療広告等ガイドラインのQ&Aは、医療機関が肯定的な体験談の投稿を依頼した場合に誘引性が生じるとしています
したがって、星の数や内容を指定しない案内にとどめる必要があります。依頼の設計は「歯科医院が口コミを増やす方法」、返信の書き方は「歯科医院の口コミ返信例文集」で扱っています。
3. 自院サイトの診療内容ページ
自由診療(インプラント、矯正、ホワイトニングなど)のページは、医療法施行規則第1条の9の2が定める限定解除の要件を満たす必要があります。条文上の要件は次の4つです。
- 患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
- 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会できるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること
- 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること
- 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること
費用とリスクの記載を落としたまま自由診療のページを公開している医院は少なくありません。ここは制作会社任せにせず、公開前に4項目を目視で確認してください。
なお、限定解除は第3項の「広告可能事項の限定」を外す仕組みであり、第2項に連なる基準(体験談の禁止、誇大広告の禁止など)はそのまま残ります。限定解除をしても患者の体験談は掲載できません。理由は「患者の体験談をサイトに載せられない理由」で解説しています。
4. 予約導線
検索から予約までの経路で、途切れる箇所を潰します。
- プロフィールと自院サイトの両方に、同じ予約手段を置く
- 診療時間外に到達した人の受け皿(Webからの予約受付、問い合わせフォーム)を用意する
- 初診の人が知りたい情報(初回の所要時間、持ち物、保険の扱い)を予約導線の手前に置く
5. 有料広告
広告は、医療広告規制が媒体を問わず適用される点に注意してください。検索広告の見出しや説明文も広告です。上位4つが整っていない段階で広告を出すと、流入が増えても着地先で判断材料が足りず、費用が測定不能なまま消えます。
やってはいけないこと
| 行為 | 抵触する先 |
|---|---|
| 患者の体験談を自院サイトに転載する | 医療法施行規則第1条の9第1号(体験談の広告禁止) |
| 有利な口コミだけを抜粋して掲載する | 誇大広告(事例解説書 第6版で例示) |
| 星4以上の人だけをGoogleへ誘導する | Googleのポリシー(肯定的なクチコミの選択的な募集) |
| スタッフが患者として投稿する | Googleのポリシー(なりすまし・利益相反)/医療広告規制 |
| ビジネス名に駅名やキャッチコピーを足す | Googleのビジネス情報ガイドライン |
| 治療前後の写真を説明なしに並べる | 医療法施行規則第1条の9第2号 |
よくある質問
ホームページと Google ビジネスプロフィールはどちらを先に整えるべきですか
先にプロフィールを整えるほうが、着手のコストが小さく済みます。プロフィールの基本情報は制作会社を介さず自院で修正でき、反映も早いためです。ただしこれは順番の話であり、サイトが不要という意味ではありません。自由診療の情報を伝える場所はサイトにしかありません。
SNS は優先順位のどこに入りますか
この記事の5段階には入れていません。歯科医院のSNS運用について、効果を示す一次情報が確認できなかったためです。私たちが支援した範囲では、更新が続く体制がある医院に限って機能しており、担当者が決まっていない状態で始めると数か月で止まる例が多くなっています。効果の断定は避けます。
競合が多い駅前で、距離の不利はどう埋めればよいですか
距離そのものは動かせません。Googleは関連性、距離、知名度の3つを挙げているため、施策として動かせるのは残る2つです。関連性はカテゴリと診療内容の登録精度、知名度はクチコミを含む情報の蓄積が対応します。なお、この3要素は日本語ヘルプで「知名度」と表記されています。以前の訳語である「視認性の高さ」を使った説明も残っていますが、指しているものは同じです。
医療広告規制は自院サイトにも適用されますか
適用されます。医療広告等ガイドラインは、患者の受診等を誘引する意図があること、医療機関等の名称が特定可能であること、医業又は歯科医業に関する内容であることの3要件を満たす場合に医療広告に該当すると整理しており、媒体をウェブサイトに限定していません。自院サイトも規制の対象として扱ってください。
本記事の手順・仕様は2026年9月時点のものです。Googleの仕様は変更されることがあります。
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