医療広告等ガイドラインと口コミ|医院が掲載してよい範囲
「患者さんが書いてくれた良い口コミを、ホームページにも載せたい」という相談は、医療機関から最もよく受けるもののひとつです。 答えは、多くの場合で「載せられない」になります。治療内容…

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- 患者が医療機関の影響を受けずに投稿した口コミは、誘引性がないため医療広告に該当しない
- 治療内容または効果に関する体験談の広告は禁止されており、限定解除の対象にもならない
- 口コミサイトからの転載や、依頼による内容の改編・削除・優先表示は広告に該当し規制される
「患者さんが書いてくれた良い口コミを、ホームページにも載せたい」という相談は、医療機関から最もよく受けるもののひとつです。
答えは、多くの場合で「載せられない」になります。治療内容や効果に関する体験談は、医療広告として認められていないためです。しかも、この制限には限定解除の仕組みが用意されていません。
一方で、患者がGoogleに自分の意思で書いた口コミそのものは、医療機関の広告ではありません。ここを混同すると、「口コミを集めること自体が違法なのか」という別の不安に飛んでしまいます。
この記事では、どこまでが医院の広告にあたるのか、口コミに対して医院が取れる対応は何か、そして2026年3月の改正で何が整理されたのかを分けて説明します。医療広告規制は解釈の幅がある領域です。個別の掲載可否は、必ず監修者と所管の保健所に確認してください。
そもそも患者の口コミは医療広告にあたるのか
医療広告規制がかかるかどうかは、誘引性があるかどうかで判断されます。誘引性とは、患者を自院に誘い込む意図があるかという要素です。
医療広告等ガイドラインおよび事例解説書の整理では、ポータルサイトやGoogleの口コミのように、医療機関の検索ができるウェブサイトに掲載された体験談について、次のように考えられています。
- 医療機関からの影響を受けずに、患者やその家族が行う推薦にとどまる場合は、誘引性が生じず、医療広告に該当しない
- 医療機関が内容の改編・削除・優先表示を依頼した場合は、医療広告に該当し禁止される
つまり、患者が勝手に書いた口コミは医院の広告ではないが、医院が手を入れた時点で医院の広告になるという構造です。
2026年3月の改正で何が変わったか
2026年(令和8年)3月30日付で、指針とQ&Aが改正され、あわせて「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書」の第6版が作成されました。
このとき、指針の名称は「医療広告ガイドライン」から「医療広告等ガイドライン」に変わっています。検索して古い版を参照してしまわないよう、確認のときは日付と版を見てください。
事例解説書 第6版で追加されたのは、自由診療における限定解除要件を満たしていない事例と、SNS・動画における広告事例です。口コミ・体験談に関する基本的な考え方の枠組み自体は、従来の整理を引き継いでいます。
医院が手を出すと、どこから広告になるのか
線引きは「医院が関与したか」に集約されます。事例解説書に挙げられている違反例を整理すると、次のようになります。
| 医院の行為 | 広告該当性 | 事例解説書上の扱い |
|---|---|---|
| 患者が自発的に投稿するのを待つ | 該当しない | 誘引性が生じない |
| 口コミサイトの好意的な口コミを自院サイトに転載する | 該当する | 有利な口コミを選別して掲載する行為は誇大広告にあたる |
| 費用負担や便宜を図って掲載を依頼する | 該当する | 依頼に基づく掲載は医療広告にあたる |
| 口コミサイト運営者に内容の改編や否定的な口コミの削除を依頼する | 該当する | 依頼による改編・削除は広告に該当し禁止 |
| スタッフが自ら体験した治療の感想を掲載する | 該当する | 患者以外が書いた体験談も規制の対象 |
| 患者の直筆アンケートを撮影・PDF化して掲載する | 該当する | 加工・転載された体験談も対象 |
| 医師の症例紹介のなかに患者の感想を差し込む | 該当する | 主観による内容・効果の体験談として扱われる |
「自院のサイトではなく第三者のサイトだから大丈夫」という整理は成り立ちません。判断されるのは掲載場所ではなく、医院が関与したかどうかです。
なぜ体験談は自院サイトに載せられないのか
医療広告等ガイドラインは、患者その他の者の主観または伝聞に基づく、治療等の内容または効果に関する体験談の広告をしてはならないと定めています。
理由は、個々の患者の状態等によって感想が異なり得るもので、誤認を与えるおそれがあるためとされています。効果に個人差がある以上、ひとりの体験が他の患者にとっての予測になってしまうことを避ける、という考え方です。
ここで重要なのは、限定解除の対象外である点です。自由診療の費用や治療内容については、一定の要件を満たせば広告可能事項の限定が解除されます。しかし体験談は、その仕組みの対象になっていません。要件を整えれば載せられる類のものではない、ということです。
体験談にあたらない情報もある
すべての患者由来の情報が禁止されるわけではありません。治療の内容や効果に関する主観的な感想が問題になります。
判断が分かれやすい領域なので、次のような情報を掲載する場合も、監修者の確認を通してください。
| 患者由来の記述 | 想定される扱い | 判断のポイント |
|---|---|---|
| 「痛みがすぐ引いた」「きれいに治った」 | 体験談として規制の対象 | 治療の効果に関する主観そのもの |
| 「説明が丁寧で納得して受けられた」 | 体験談として扱われた違反例がある | 治療内容の説明に対する感想は効果の話に接続しやすい |
| 「予約が取りやすかった」 | 治療内容・効果に触れないが要確認 | 前後の文脈で治療の話につながっていないか |
| 「駐車場が広くて助かった」 | 治療内容・効果に触れないが要確認 | 単独で掲載されているか、体験談の一部か |
これらが体験談にあたらないと言い切れるかは、書きぶりと文脈によります。安全側に倒すなら、患者の言葉を自院の媒体に載せないという運用が最も手戻りがありません。
医院が取れる対応
禁止事項が多い一方で、できることが何もないわけではありません。実務上の手順は次のようになります。
- 自院サイト・SNS・チラシから、治療内容や効果に触れた患者の声を洗い出して取り下げる
- 症例紹介のなかに患者の主観が混ざっていないか、文単位で点検する
- スタッフのブログや動画に、治療の感想が含まれていないか確認する
- 口コミサイトやGoogleの口コミについて、内容の改編・削除・優先表示を依頼していないか、代行業者を含めて確認する
- 残す情報は、医療広告として認められる範囲か監修者に確認する
4は見落とされやすい項目です。運用を外部に委託している場合、医院が知らないところで依頼が行われていると、医院の行為として評価される可能性があります。委託先との契約内容と実際の作業範囲を確認してください。
低評価の口コミへの対応
事例解説書では、医療機関からの依頼による口コミの削除は広告に該当し禁止される一方、当該体験談が名誉毀損等の不法行為にあたる場合は、医療機関による削除等の依頼は医療法違反にあたらないとされています。
つまり、低評価だから消すという依頼と、権利侵害だから消すという依頼は、扱いが異なります。ただし、どこからが不法行為にあたるかの判断は医院が単独で行えるものではありません。弁護士の関与が前提になります。
なお、Googleの口コミに医療機関が返信する行為そのものが医療広告に該当するかについては、ガイドラインおよび事例解説書に明示の記載を確認できませんでした。返信の内容が治療の効果に触れれば広告規制の観点が生じ得ますし、来院の事実に触れれば守秘義務と個人情報の問題が生じます。返信の可否と書き方は、監修者と方針を決めてから運用してください。
口コミを増やす取り組みは可能か
患者に口コミの投稿をお願いすること自体は、医療広告規制とは別の論点です。ただし、Googleのポリシーがインセンティブ付きの口コミや評価の操作を禁止しているため、特典と引き換えに投稿を求める運用はできません。
また、依頼の仕方によっては「医療機関からの影響を受けずに行う推薦」という前提が崩れ、広告該当性の議論に入る可能性があります。依頼の文面まで含めて監修を通すことをおすすめします。
よくある質問
Googleに書かれた患者の口コミは、医院の責任になりますか
患者が医療機関の影響を受けずに自発的に投稿したものであれば、誘引性がなく医療広告には該当しないと整理されています。医院が掲載を依頼したり、内容の改編・削除・優先表示を求めたりした場合は、医院の広告として扱われます。関与の有無が判断の分かれ目です。
口コミのスクリーンショットを院内に掲示するのは問題ありますか
治療内容や効果に関する体験談であれば、掲示する媒体を問わず広告として規制の対象になります。事例解説書では、患者の直筆アンケートを加工・転載した場合も対象になるとされています。院内掲示も医院が行う掲載である以上、同じ考え方が及ぶと見ておくのが安全です。監修者に確認してください。
「患者様の声」という見出しを避ければ掲載できますか
見出しの表現を変えても、内容が治療の内容または効果に関する主観的な体験談であれば扱いは変わりません。事例解説書では、医師による症例紹介のなかに患者の感想が含まれる場合も違反例として挙げられています。形式ではなく記述の中身で判断されます。
自由診療なら限定解除で掲載できるのではないですか
限定解除は、広告可能事項の限定を一定の要件のもとで解除する仕組みです。体験談はこの仕組みの対象になっていないため、自由診療であっても掲載できません。なお、令和8年3月作成の事例解説書 第6版では、自由診療における限定解除要件を満たしていない事例が新たに追加されています。
過去に掲載した体験談は、いつまでに取り下げるべきですか
期限が定められているわけではありませんが、ウェブサイトは監視事業の対象になっています。改正の内容を確認したタイミングで点検し、該当するものから順に取り下げるのが現実的です。取り下げの判断と範囲は、監修者と所管の保健所に確認してください。
本記事の手順・仕様は2026年9月時点のものです。Googleの仕様は変更されることがあります。
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